福島県飼料用稲わら確保推進方策



第1 趣旨


 平成12年3月及び5月に92年間認められなかった口蹄疫が国内で発生し、輸入稲わら等がその感染源として否定し得ないことや飼料自給率の向上を図るためにも、輸入稲わら依存から国産稲わらへの転換が求められている。また、耕種部門においては、たい肥等を活用した土づくりと化学肥料・農薬の使用の低減を一体的に行う、環境と調和のとれた持続的な農業を推進することが求められている。このような状況の中で、安全な粗飼料を確保するとともに、家畜排せつ物と稲わらの循環利用を促進する必要があることから、関係者が一体となって飼料用稲わらの確保推進を図るものとする。



第2 飼料用稲わらの現状


 稲わらは、大家畜経営において飼料や敷き料として利用され、特に肉用牛経営において貴重な粗飼料となっており、本県における飼料用稲わらの必要量については年間7万トン程度と推定される。平成12年における県産稲わらの生産量は43万トン程度と見込まれるが、飼料仕向が6.5万トン(15%)、敷き料仕向が2.7万トン(6%)と推定され、飼料仕向は全国平均の11.5%を上回っているものの、6割を超える稲わらがそのまますき込まれている状況にある。飼料用稲わらは、個々の畜産農家が稲わらとたい肥の交換利用や地域における耕種農家との結びつきの中で確保しているが、大規模肉用牛肥育経営を中心として平成11年には約3千トンの輸入稲わらが利用されている。口蹄疫の発生に伴う非清浄国以外の地域から輸入される稲わら等の検疫の強化や、完全自給を目指す「国産稲わら緊急確保対策協議会」の取り組みに適切に対応するため、本県においても飼料用稲わらの自給体制を早急に確立することが必要となっている。


第3 飼料用稲わら確保に係る主要な課題


1.ほ場及び作業条件等

 水田のほ場条件や収穫時の天候に恵まれない地域も多いことから、飼料向けとして品質確保や効率的な稲わらの収集が課題となっている。なお、飼料用稲わらの品質確保及び効率的収集のためには、関係者の協力により、コンバイン収穫作業時の切断長を長くすることや稲わら結束機の導入等により土砂等の混入を防ぐとともに、稲わら収集ほ場の団地化やほ場条件の改善により作業効率を高める必要がある。
2.供給及び価格

 現在、飼料用稲わらは、個々の畜産農家が耕種農家との結びつきの中で確保しているものがほとんどであり、組織的取り組み事例は少ない。今後新たな供給量を確保するためには、地域営農システム等の中で組織的な取り組みによる需要者のニーズに応じた量や品質の確保が課題となっている。また、輸入稲わらに対抗できる安定した価格による供給も課題となっている。なお、「稲わら等の需要・供給に関するアンケート調査」(平成12年6月実施)では、稲わらの収集・受け渡し方法について、畜産農家の約3割が庭先までの運搬を希望し、畜産農家へ搬入が可能とした稲作農家は1%であった。
3.流通及び販売
 飼料用稲わらは年間を通じ必要とされるが、生産は秋口に限定されることから、貯蔵保管施設の確保等による安定した流通及び販売体制の確立が課題となっている。なお、輸入稲わらは、経営上必要な量を、許容できる品質及び価格で、必要な時期に入手できることがメリットとなっており、県産稲わらの流通・販売、においては、数量、価格、品質、荷姿等について輸入稲わらの条件を具備する必要がある。


第4 飼料用稲わらの確保推進目標


 飼料用稲わらについては県産稲わらで自給し、輸入稲わら利用をなくすことを目指すこととし、その目標年を平成15年、目標数量を7万トンとする。


第5 飼料用稲わら確保推進に係る基本的考え


 県産稲わらの飼料としての利用推進に向け、次の考えを基本とし関係者が一体となって取り組むこととする。
1.飼料用稲わらの品質確保と安定的な供給


(1)稲わらは家畜の飼料として給与されるものであることから、土砂の混入等がなく、適度な水分であることなど、畜産農家の求める品質を具備していること


(2)年間を通じ給与されるものであることから、稲わら供給者と畜産農家の間で安定的な供給、利用体制の確立に努めること


 
2.飼料用稲わらの地域内利用の推進


(1)本県の大家畜経営は水稲との複合経営が多いとともに、稲わらの供給地が近隣に存在すると考えられることから、稲わらとたい肥の循環等も考慮し、地域内利用の推進と拡大を基本とすること


(2)地域内利用の推進に当たっては、飼料用稲わらの供給者と利用者間における品質や価格及び供給時期等に関する合意が重要であると考えられることから、関係機関・団体等は両者のニーズを踏まえ必要な情報の提供に努めること


(3)地域内で必要量を確保することが困難な経営体では、広域的利用を推進する必要があることから、市町村を超えた広域的な流通に必要な情報の提供や流通システムの整備に努めること


3.稲わらの畜産利用の推進


 稲わらは飼料向けのみに限定することなく、敷き料や堆肥生産に係る副資材として利用するなど畜産利用を推進し、貴重な有機質資源である稲わらとたい肥の循環利用に努めること


第6 飼料用稲わら確保推進に係る当面の取り組み


飼料用稲わらは県産稲わらで自給し輸入稲わらの利用をゼロとするため、県産稲わらの利用拡大を推進するために関係機関・団体で構成、設置した「福島県自給飼料増産推進協議会」を主体に、当面、次の取り組みを行う。


1.情報の収集・提供の推進

(1)稲わら供給関係者に対する畜産農家のニーズや、稲わらの収集・確保に関する助成措置(自給飼料増産総合対策事業、国産粗飼料増産緊急対策事業など)等の情報提供


(2)「東北地域における稲わら等の需要・供給情報」(平成12年8月)の活用


(3)助成措置活用事例の紹介


2.生産技術の向上


 新たに飼料用稲わらを生産確保しようとする集団等に対する良質な稲わら確保に係る技術指導


3.地域推進体制の整備


(1)飼料用稲わらの確保推進のための地域体制整備等の促進

(2)収集ほ場の団地化等の指導支援