[位置] 小高町は福島県の東端部は浜通りのほぼ中央部に位置し、東は太平洋に面し、西に阿武隈山系の山並が連なっています。 |
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[気候] 東日本海型海洋性気候で寒暖の差は比較的少なく、年平均気温12.3℃・年間降水量1,320oで冬でもほとんど積雪がない温暖な気候です。 |
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[地理] 大富酪農研究会の所在する大富地区は町の北西部に位置し、阿武隈山系より東走する丘陵性の山間に拓けた集落である。標高およそ40bで、土壌は灰色土壌と砂礫層です。 |
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[交通] 国道6号線から7km、市街地から6kmにあるほか、特に道路網の整備は進み、当地区を南北に縦走する県道相馬浪江線は国体開催に合わせ整備され交通の便には恵まれたところです。 |
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[農業形態] 地区の農業形態は、水稲を中心として、酪農・野菜・養豚・花卉等の複合経営を営んでいます。
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[観光] 国指定重要無形民族文化財に指定されています相馬野馬追いがあり、真夏の7月23日から3日間人馬一体となった勇壮な戦国絵巻が繰り広げられます。 24日は当地の小高神社において、裸馬を奉納する野馬懸の神事が執り行われます。 |
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U.大富酪農研究会の概況
1.発足と生い立ち
当地区の農業形態は、水稲を中心に養蚕・たばこ・養豚・果樹等の複合経営が主な ものであたっが、昭和28年から29年にかけての大冷害襲来により、比較的冷害に強いとされる酪農への取り組みが始まり、「水稲+酪農」経営を始めるに至った。その後少しずつではあるが増頭を続け、「酪農+水稲」形態に変わり。昭和43年に集落内の酪農家有志が集まり、規模拡大と粗飼料の自給率100%を目指した酪農技術改善を目標とした研究会を発足したのが始まりであります。
2.メンバー構成と経営内容
調査:H11.1.28
項目 | A | B | C | D | E | 計 | 戸平均 | |
経営者年齢 | 33 | 37 | 41 | 49 | 42 | − | − | |
乳 牛 | 成牛(頭) | 39 | 39 | 37 | 37 | 27 | 179 | 39.4 |
育成牛(頭) | 18 | 17 | 22 | 15 | 15 | 87 | 17.4 | |
計 | 57 | 56 | 59 | 52 | 42 | 266 | 53.2 | |
土 地 | 草地(a) | 830 | 700 | 600 | 600 | 430 | 3,160 | 53.2 |
飼料畑(a) | 400 | 250 | 250 | 350 | 400 | 1,650 | 632.0 | |
(内)水田転作(a) | 401 | 358 | 382 | 438 | 279 | 1,859 | 330.0 | |
計 | 1,230 | 950 | 850 | 950 | 830 | 4,810 | 962.0 | |
牛 乳 | 販売乳量(t) | 254 | 299 | 256 | 299 | 194 | 1,302 | 260.4 |
3.組織運営
組織として活動を推進するため、規約に基づき、会長、会計、機械係を定めている。
会長は、組織全般の活動状況を把握し、健全な活動に留意している。また、年1回
総会を開催し運営状況等構成員に周知させるほか、必要に応じ集会を開き相談会を開
催する。
会計は、組織の全般的な金銭関係を把握し、構成員からの会費(利用料金等)や借
入金返済の徴収、また、総会における収支決算報告や長期返済計画の作成をする。
機械係は、所有している機械の維持・管理や貸し出しの計画調整を行う。
(別添:大富酪農研究会規約・共同利用機械管理規定)
4.研究会事業
この組織は、構成員の経営向上の為以下の事業を推進する。
項 目 | 具体的な活動内容 |
共同作業 | 飼料作物の栽培収穫調整作業 |
機械の共同利用 | 作業機械の共同購入・利用、個人所有の仕様の統一 で誰でも利用でるようにし、過剰投資を防止 |
施設の共同利用 | 機械庫・堆肥舎を補助事業で導入し活用 |
農用地利用権の調整 | 研究会が集団転作の推進者として役割を果たし、農地の流動化を積極的に推進 |
研究会は水田の高度利用による酪農経営の拡大と経営の安定のため、積極的に飼料作物の転作田利用に取り組み、転作の推進にも大きな役割を果たすと共に、作業能率の向上のため農機具等の導入については積極的に補助事業を活用し、過剰投資を避け、さらに共同作業等により粗飼料の増産に努力してきました。
5.地域営農
集落の水田集団転作においては、小高町の事業推進の中心的な役割を果たし完全に
定着しており、今後はこの定着した集団転作を基盤として、更に遊休耕地の受託、未
利用地等の開発を実施することにより、集落の土地の有効利用を図りながら、良質粗
飼料の研究、また実際に栽培することによる実践確認等、積極な展開をしています。
大富地区生産調整実施状況及び研究会受託面積 | |||||
水田面積 (a) |
生産調整 目標面積 |
肩代わりによる 目標の集落間 調整面積 |
生産調整 目標面積 |
生産調整 実施面積 |
実施率 (%) |
6,964.16 | 2,302 | 1,858.09 | 4,160.09 | 4,160.09 | 59.7 |
研究会面積 | 地区内の44.7% | 1,859.94 |
この研究会は、地域営農を考え員外利用も認める開かれた会で、和牛農家、養豚農家 の利用もあります。例えば、飼料作物の収穫作業請負や機械の貸し出しを実施しており ます。
V.年度別取組事業
年度別事業名 | 事業内容 | 事業費 | トッピクス | |
S43 | 公共牧野造成事業 | 2.2ha造成 | ||
S43 〜44 |
畜産経営技術改善事業 | ヘイメーカー1台・モアー2台 ヘイメーカー1台・ヘープレス1台・サイロ2基 |
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S45 | 自給飼料生産対策事業 | トラクター1台(39ps)・ローダー1台・ ブロードキャスター1台・車庫1棟 |
1,985,000 | |
〃 | 積寒対策事業 | 耕地整理3.3ha(通年施行) | ||
S46 | 【グループで転作に取り組む(5.5ha)】 | |||
S47 | 【首都圏農業確立運動入賞】 | |||
S48 | 稲作転作事業 | トラクター1台(62ps)・ワゴン1台(2t) マウントカッター1台・ヘイメーカー1台 尿ポンフ1台・暗渠排水 |
8,129,000 | |
S51 | へき地振興特別対策事業 | コーンハーベスタ1台・ファームワゴン1台 ファームワゴン1台・フォーレージハーベスタ2台 |
3,216,000 | |
S52 | 緊急飼料増産対策事業 | トラクター2台・ファームワゴン2台・ バキュウーム1台(3t) |
9,008,000 | |
S53 | 【普及事業30周年記念事業表彰】 | |||
S54 | 転作促進特別対策事業 | ディスクモア1台・コーンハーベスタ2台 ディスクハロー1台・ボトムプラウ1台テッダー 1台ブロードキャスター1台 ドキングローダー1台・車庫1楝 |
7,647,000 | 【研究会青白】 |
S57 | 農村漁村振興特別対 策事業 |
マニュアスプレッタ1台(3t)・フレールハーベスター 3台 |
4,056000 | 【畜産経営土地利用技術普及浸透事業】 【転作優良集団知事賞】 |
元 | 構造政策推進モデル 集落整備事業 |
ロールベーラー1台・タイトベ-ラ1台・テッター2 トライテントハロー1台・ディピイングワゴン1台 ハーベスター1台・ファームワゴン2台・フロント ロータ2台・堆肥舎2煉・マニュアスプレッター 1台 |
44,654,630 | |
H4 | 近代化リース | ロールベーラ1台 | 3,180,000 | |
H6 | 研究会資金 | コーンプランター・モアコンディショナー | 3,150,000 | 【パソコン記帳開始】 |
H10 | 研究会資金 | バキュームカー・マニュアスプレッター | 3,200,000 | 【県堆厩肥・飼料生産技術コンクール】 最優秀賞 |
1.農地開発
酪農を経営していく上で飼料作物の確保は最優先の重要課題であり、圃場の確保につ いても飼養頭数の増加に伴い、それに見合った面積が必要となり、昭和44年〜45年度 に水田暗渠排水工事が実施されたのを契機として、昭和45年度に打ち出された米生産 調整が話題となり、研究会は率先して集団転作実施計画を樹立し実施してきたところで ある。牧草地確保の具体的方法として農用地利用権の調整も行い、また、転作において は肩代わり転作普及にも努め、集落の転作達成に大きく貢献しています。
また、事業を活用して徐々に飼料基盤の充実を図ってきました。
年度別草地開発 | ||
実施年度 | 事業名 | 面積 |
昭和43年度 | 公共牧野造成事業 | 2.2ha |
昭和45年度 | 積寒対策事業 | 3.3 |
昭和49年度 | 飼料作物生産振興対策事業 | 2.7 |
昭和53年度 | 緊急飼料増産総合対策事業 | 2.2 |
昭和58年度 | 自給飼料生産総合振興対策事業 | 3.1 |
昭和63年度 | 飼料基盤整備事業 | 3.5 |
2.糞尿処理
当グループでも、元年に共同堆肥舎2棟を設置したことで糞尿への関心が高まり、 積極的に切り返しを施し良質堆肥の生産に努めています。合わせて4基の共同堆肥舎 を活用して生産し、地域耕種農家への供給と稲わら交換も実施しています。
これまでの成果として、会員の中よりこの程県堆きゅう肥・飼料生産技術コンクー ルで最優秀賞の栄誉を頂きました。
平成8年度よりは尿のばっ気処理を開始しました。ばっ気処理を開始したことによ って、尿散布時の悪臭は、かなり軽減されたように思います。平成8年と平成9年に、 相双家畜保健所、原町地区普及センター、酪農組合浜支所の調査によりますと、悪臭 の大きな原因となる硫化水素の揮発量は調査農家中、最も少ないデータでした。
堆肥成分分析結果 | |||||||||
水分 | PH | EC | C/N | 有機物 | N | P2O2 | K2O | CaO | MgO |
66.3 | 7.3 | 0.56 | 17.4 | 50.3 | 1.44 | 1.33 | 0.7 | 1.86 | 0.73 |
[平成9年度収支決算書(H9.4.1〜H10.3.31)] 収入の部
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4.研究会所有機械
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W.活動成果
研究会は、自給粗飼料を最大限に活用した土地利用型酪農形態であります。特に自給 粗飼料の生産原価が個々の経営ポイントになり、研究会による機械の共同利用で、減価 償却費において県平均に対し約70%ですむことで、自給粗飼料生産原価が県平均より 5円以上安くなります。また、飼料のTDN自給率も約50%に達することは購入飼料 節減にも大きく貢献しています。
また、自給粗飼料収穫調整を共同作業で行うことで、作業時間の短縮と収穫物の品質 向上が期待され、乳量・乳成分も年間安定しています。
生乳生産量は、大富研究会会員5戸で年間生乳生産量1,302tで、小高町全体(20戸で年間生乳生産量3,142t)の41%を生産しています。
X.研究会の特徴
@会運営は全員の相互理解のもと話し合いで決定。
A5名で機械を所有するので負担が1/5である。
B自給粗飼料栽培調整収穫作業は共同で行い、特に1番草収穫時は全圃場の作業計画を立てて作業分担をするので、短時間に作業が進み良質
なものが収穫される。
C全員で定期的に機械の整備点検を実施するのでトラブルが少ない。
D半径500bの家族の関係で、緊急事態があれば直ぐに集まれる。
E全員定期酪農ヘルパーを利用し精神的・肉体的にも余裕がある。
F全員パソコンを活用して経営管理・青色申告をしている。
G経営者の年齢が近く・経営規模が類似してる。
H全員ヨーロッパ農業研修に参加し、その体験は経営・生活に生かされている。
I地域の他農家にも開かれた運営をしている。
J会員全員が他の地域活動に多方面に活躍している。
Y.おわりに
私たちの地域も遅ればせながら高速道が延伸され、都市との交流も多くなり置かれる環境も大きく変化していくものと考えます。そんな中、仲間と酒を酌み交わしながら将来の計画や夢を語り合うとき、自由化に向け未利用地を集積し、土地利用型酪農の拡大を図ったり、更には加工部門も取り入れた観光牧場構想が出たりと、話は大きく膨らみ絶えることがありません。
経営の本質は、最小の資本投下で最大の効果を上げることです。自給粗飼料を基本とした私達の経営には、同じ目標を持った大富酪農研究会は無くてはならないものであり、共同経営者と言っても過言ではありません。今後とも仲間と手を携えながら、安定した自給飼料確保は経営上は勿論のこと、自給率アップで低コストを追求しながら、地域に根ざした酪農経営を目指して行きたいと考えています。